(2019年6月)

~  “いのちを守る夏” -熱中症を中心にー ~

温暖化の影響により、気候の変動は大きくなる一方です。今後も、激しい寒暖差や、急な気圧の変化に適応していかなければなりません。ここ数年、春を感じるのも束の間です。5月なのに熱中症のニュース。6~7月は、これまで以上に熱中症の危険性が高まる季節となっています。身体が高温環境に慣れるまで、2~4週間かかります。特に梅雨明けは、気温と湿度が急に上昇するため要注意です。ヒトがもつ、暑さに対して体温を下げる仕組みは、汗をかいて熱を放散することだけです。湿度が高い環境下では、汗が蒸発しにくいため、無効な発汗となってしまい、体温を下げることができなくなります。

疲労、寝不足、発熱などがあると、熱中症になりやすいため、用心が必要です。こむら返り・めまい・立ちくらみなどを感じたら、速やかに休息をとり、水分を補給し、体を冷却しましょう。頭痛や嘔吐、異常なだるさがみられた時は、緊急事態であるとの認識が必要です。判断力が低下したり、会話ができない状態は重症で、救急搬送を要します。

熱中症は、炎天下で発症するものと思われがちです。湿度が高く、風通しの悪い屋内も危険です。高齢者の室内での熱中症は、重症化しやすいとされます。室内温度はゆっくり上昇しますので、自覚しにくい上に、独居では発見も遅れがちです。防犯のために窓を閉め切ったり、トイレ予防のための過度な水分制限も原因となります。

気温が上昇すれば、血液の流れが悪くなり、血管が詰まりやすくなることで、脳梗塞や心筋梗塞の危険性も高まってきます。似た症状から熱中症と誤り、発見が遅れることもあります。近年、冬場に多いと思われてきた脳梗塞の発症は、夏期の方が多くなっています。予防には、起床後~午前中の水分摂取が重要です!水分としては、活動前や活動中に、お水や麦茶、スポーツドリンクなどを飲用します。脱水状態の速やかな改善のためには、「経口補水液」がおすすめです。水1㍑に砂糖40g、塩3g、オレンジなどの絞り汁でカリウム補給もできればOKです。糖分が多い清涼飲料水を飲みすぎると、急性の糖尿病になってしまう場合もありますので注意しましょう(清涼飲料水ケトアシドーシス)。動悸や口の渇き、 だるさなどの症状から、熱中症と誤り、さらに飲みすぎてしまうことになりかねません。

「水分はとれていますか?」 「はい大丈夫です。」と患者さん。内容を伺うと、「朝食にはコーヒー、昼はお茶をコップ一杯、夜はおしっこに起きるから、とらないようにしています。」 え?それだけですか?という感じです。コーヒーやアルコールは、利尿がつきやすいため、水分にカウントしません。カフェインの作用などにより、飲んだ量以上の水分が出ていってしまう可能性があります。持病のない成人では、真夏は1.5~2㍑の水分をとりましょう、と言われますが、生活習慣病をもつ患者さんが多い当院では、個別にお声かけをしています。動脈硬化が進行していたり、脳卒中や心筋梗塞などの既往がある患者さんへは、時候の挨拶代わりに、年中注意喚起しています。心不全や腎臓病をおもちの方には、塩分制限のこともふくめた、きめ細やかな注意を必要とします。猛暑は、豪雨と並んで夏の災害ととらえ、自助努力と対策が必要です。今年も“いのちを守る夏”を一緒に乗り切りましょう!