平成25年の吉備・綾南まちかど博物館。邸内公民館での講演会でした。「認知症の話などはどうですか?」と提案を受けました。最初は戸惑ったのですか、よく考えてみますと、このような町おこしのイベントの日に、ふさわしい内容だと思い、喜んでお引き受けいたしました。
 
平成25年11月3日 まちかど博物館 講演会
「認知症を知ろう 認知症と向き合おう」


認知症は、加齢現象の単なる「もの忘れ」とは異なります。自分が体験したこと自体を忘れてしまうことが大きな特徴です。朝食に何を食べたのか、誰でもその内容については忘れてしまうこともあるでしょう。単なる「もの忘れ」です。しかし、朝食を食べたかどうか、その体験自体を忘れてしまうと、生活に大きな支障を来します。

認知症の症状は、「記憶の障害」や「判断力の低下」がその本質です。時間や場所、人物を思い出せなくなります。買い物ができなくなり、段取り良くお料理ができなくなります。自動車の運転ができなくなります。つまり認知症とは、「今までできていた生活が、徐々にできなくなる病気」なのです。特別な病気ではなく、65歳以上の10人に1人は認知症なのです。「アルツハイマー型認知症」では、発症の20年以上前から脳に変化が現れ始めることがわかっています。予防と早期発見が大切なのです。

症状は、本人はもちろん家族にも気がつきにくいものです。毎日一緒に生活していると、家族から見ても、「年のせいかな・・・」などと考えるだけで、見過ごしてしまいがちです。実際に生活に支障が出そうな事柄がないかをチェックしてみるとよいでしょう。医療機関を受診する際、家族に連れられて受診した患者さんの多くは認知症です。患者さん自らが心配して受診した場合、認知症である可能性は低くなります。

治療の観点から幾つかの大切なことがあります。
(1)生活習慣病治療を続けること。高血圧や糖尿病は認知症の危険を高めることが分かっています。認知症の予防としても、最も大切です。
(2)認知症に対するおくすりは、現在のところ、進行を遅らせることが目的です。記憶力の改善まで至らないことが多いのですが、同じことを繰り返し聞かなくなったなど、日常生活での良い変化もくすりの効果として期待されます。根本的な治療法が無くとも、進行が緩やかになることで、周りの環境を整え、上手に対応する余裕が生まれます。適切な対応により、ご本人の名誉や人権を守り、家族を救うことにもなるのです。
(3)家族や周辺の対応が最も大切です。認知症の人の思いをよく理解し、人としての尊厳を大切にすることです。介護保険のサービスも利用しましょう。「成年後見制度」は、認知症のように判断力が不十分な人の財産や権利を保護するために、援助する人を選ぶ制度です。

認知症の予防には運動が効果的です。研究の結果、運動習慣がある人の方が、発症率が低かったのです。最近、“よく噛む”ことが脳に対して認知症予防効果のあることが、医学的に裏付けられてきています。運動に加えて、頭を使う内容を取り入れるとより効果的です。しりとりをしながら踏み台昇降、計算をしながらウオーキング・・・などです。仲間とおしゃべりしながら楽しんで歩くことも有効です。庭瀬界隈を、歴史案内をしながら散策する・・・これ以上の認知症予防は無いように思えます。

修道院のシスターを対象とした研究で、100歳を過ぎ、死後に脳を解剖すると、アルツハイマーの変化があるのに、生前には認知症の症状はみられなかった、という報告があります。若い頃からの信仰生活。規律正しく勤勉な毎日を送ることで、認知症があっても表面化せず、生活にも支障を来さなかったと考えられます。認知症での一番の問題は、環境の変化に上手く適応できなくなることです。そして、日常生活に支障を来します。逆に、日常生活に困らなければ、認知症ではない?とも言えます。ですから、住み慣れた地域で長く暮らしていくことが、何よりの治療になるのです。認知症になっても安心して暮らせる街づくりこそが、今の地域社会に求められているのです。大人はもちろん、子供たちにこそ、認知症を知ってもらうことが重要です。まちかど博のようなイベントは、そのようなコミュニティを支える第一歩となっているのではないでしょうか。
※認知症高齢者の自動車運転(免許証の更新)のことについても触れましたが、紙面の関係で割愛させていただきました。機会を改めて掲載するつもりです。


 
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