(2020年8月)

~ フレイル再考 ~

“フレイル”は、介護が必要となる一歩手前の状態を意味します。未然に防いで、健康寿命を延ばすことが求められています。予防対策の中で特に重要なことは、運動と食生活の改善でしたね。足腰が弱ってしまい、転倒や骨折でねたきりになる高齢者は増えています。骨を強くする(骨折を予防する)治療は進歩しましたが、骨は自分では動けません。骨を動かしているのは、筋肉です。「私は、ねたきりですが、骨は絶対折れませんから・・・」なんて、笑うに笑えませんよね。筋肉量を維持することは、大切なことなのです。

すき間ができれば、筋肉量が少なく、“やせすぎ“の恐れがあります。(下図)

フレイルが心配になる年齢では、すでに複数の病気をもっている人も多いでしょう。脳卒中や心臓病、腎臓病、糖尿病、骨粗鬆症、肺の病気などがある人ほど、フレイルになり易いということが分かっています。高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病の治療を続けることは最も大切です。その上で、「メタボ予防から、フレイル予防へ」と、頭の中の考え方を “ギアチェンジ!” していくことも必要になってきます。高齢になってからの無理なダイエットは危険です。ここからが、当院のような総合診療医の出番です。長年診てきた患者さん一人一人の、日ごろの全身状態や、関節の痛みの有無、服用しているおくすりの内容などから、適切なアドバイスにつなげます。とは言っても、フレイル対策には、“自助努力”が欠かせません。自分から動かなければ始まりません。たった2種類程度でも、体操指導をさせていただくと、良い変化を実感し、次の外来で喜びを伝えてくださる方もおられます。介護予防教室(岡山市ふれあい介護予防センター)や、あっ晴れ!もも太郎体操、ふれあい・いきいきサロン、公民館の各種講座などの、“通いの場”も上手く利用しましょう。新型コロナの影響で、フレイル人口は確実に増えました。しっかり予防対策をとりつつ、この数か月間での衰えを取り返していきましょう。

高齢者のたんぱく質摂取量の基準は、体重1kg当たり1.2~1.5g/日が推奨されています(60kgの体重の人で70~90g/日)。1食あたり25~30gで、これは鶏肉・牛肉・豚肉およそ100gに含まれるたんぱく質です。豆腐や納豆1パック、卵1個、牛乳コップ1杯には、たんぱく質が7g含まれます。鮭や白身魚1切れには20g、ヨーグルト1個には3g、プロセスチーズ1個には5g含まれます。これらの食材を組み合わせて、必要な量のたんぱく質を1日で摂ればよいのです。どうですか?意外に足りていないのではないでしょうか。70歳以上の受診患者さんには、定期採血で「アルブミン」というたんぱく質を測定している場合が多いと思います。栄養状態を反映し、適切なアドバイスの参考にしています。毎日の積み重ねでしっかり、“貯筋” していきましょう!