2013年10月
 
~焼肉には白米でしょ!?(その2)~
 
前号で取り上げた「糖質制限食」のお話のつづき。主食のごはん・パン・めん類などの炭水化物を食べない食事療法。糖尿病の治療やダイエットに導入されつつあるものの、長期的な安全性は未知数。焼肉屋さんで、白米を食べることをがまんするストレスと戦う “したたかさ” が必要である? ことも書きました。実は最近、糖尿病の合併症に関与し、老化の原因ともされる物質が判明しました。それがAGE (終末糖化産物 : dvanced lycation nd Products) という物質です。過剰な糖分は、血管壁のコラーゲンなど様々なタンパク質に沈着し、熱(体温)で変性して元に戻らなくなります。これがAGEです。糖尿病で動脈硬化が進行しやすい原因の一つと考えられています。AGEの1/3は食事を介して口から摂取されます。キツネ色に焦げた部分に含まれます(ぎょうざ・ホットケーキの焦げ目など)。残り2/3は体内で作られます。AGEは老化の原因物質とも考えられており、皮膚では、しわ・しみ(まさに焦げ目)、骨では骨粗鬆症、眼では白内障、脳ではアルツハイマー型認知症など、あらゆる臓器に関わります。さらに、がんの発生にも関与することが明らかとなっています。実際、糖尿病では、健康な人と比較して、がん・認知症・骨粗鬆症などになりやすいのです。高血糖状態が続いてAGEが産生されやすい糖尿病は、まさに「万病のもと」なのです。

不老不死のくすりを求めて死期を早めた秦の始皇帝。糖質制限で白米をがまん、AGEを気にして焼肉をがまん・・・。限りない健康志向は行き詰まる(=息詰まる)のではないでしょうか。AGEについては創薬を期待しつつ、アンチエイジングの夢は、夢のままでも良いのかもしれません。私は、最近目につく多数の健康本のように、「~すれば健康になる」的な発想を忌みつつ、確信を抱いていることがあります。それは、食事も「バランスが大切」 だという単純なことです。これだけで健康になれる、病気が治るという表現には懐疑的になるべきでしょう。かつてTVの影響で店頭から消えた納豆やバナナ。フードファディズム(ある食べ物の効果を過大に評価してしまうこと:食べ物流行かぶれ)とは、そろそろお別れしてもいいのではないでしょうか。