(2016年8月) 

~ おくすり四方山 Q & A ~

「美味しいから」との理由で、倍量のお薬を服用した患者さん。「ついうっかり」という理由で、錠剤をプラスチック包装ごと服用した患者さん。決して稀ではなく、実際に経験することです。「うっかり」 しがちな、お薬についての身近な疑問にお答えします。

Q1 「食後」 のお薬は、食事がとれなかった時は、服用しない方が良いですか?

お薬の用法は、とても多彩になってきており、複数のお薬を服用している方は、自己管理が大切です。 食後:食後30分以内。胃を悪くするから食後だと思われがちですが、飲み忘れを防ぐ意味合いの方が大きい場合も。血圧のお薬などは、空腹でも定時に服用することが大切です。 食前:食事30分前。ある種の胃薬は、タイミングを合わせることで効果が出ます。 食直前:食後の血糖を下げるお薬は、「いただきます」の時に服用します。食間:漢方薬は生薬なので空腹時が有効です。飲み合わせが悪いため、他のお薬の影響を避ける目的で食間に時間をずらすこともあります。食後2時間以上たてば、食間と考えてOKです。「頓服」は、症状が現れた時に服用するという意味ですが、意外に「粉薬」、「解熱剤」、「包装紙に包まれたお薬」のことだと誤解されている場合も多いようですね。

Q2 軟膏をもらいましたが、べたつくのが嫌で薄く伸ばして使用していますが?

外用薬には、軟膏・クリーム・ローションなどの剤型があります。軟膏はべたつきますが、皮膚保護作用に優れています。クリームは塗心地が良い一方で、刺激が強かったり、乾燥させるものもあります。外用薬の使用には “塗布する”という自己管理が必要で、上手く塗れなければ有効性が低下します。5mm口径のチューブで、人差指の指先から第1関節まで指腹に押し出した量(図)が、手のひら2枚分の面積の塗布に適切な量です。やさしく塗り広げます。強くこすると皮膚のバリア機能が障害される上、効きも悪くなります。

Q3 服薬を嫌がる小児  いい対処法は?

生後6か月を過ぎると、1歳頃からは服薬を嫌がる子供が増えてきます。新生児~1歳(乳幼児)では、水で溶かしてスポイトや小さじで少しずつ与えたり、「お薬団子」を作ってホッペの内側に塗る方法が推奨されます。1滴ずつ水を加えてちょうどよい硬さの泥団子状にするのがポイント。その後にミルクを与える(食前に与えると空腹のため受け入れやすい)などの工夫も。食後ということには、あまりこだわらず、定期的に服用してもらいましょう。4~5歳になれば必要性を理解してもらい、自ら飲もうとする気持ちを引き出すようにします。ある種の抗菌薬は、スポーツドリンクや酸味のある飲み物と混ぜると、苦みが出やすくなります。乳脂肪分の高いアイスクリームや練乳に混ぜると飲んでくれることも。

Q4 最近調子が良いので、お薬を1日おきに服用しています・・・。

用法が1日1回のお薬は、1日効果が持続するのですが、1日おきでの有効性は不明です。生活習慣病関連(高血圧・脂質異常症・糖尿病など)のお薬は、厳しい臨床試験を通過した有効性・安全性の高いものばかりで、用法を守ることが非常に大切となります。

Q5 週刊誌にくすりの名前を挙げて、服用すると危険だと書いてありました。

中高年をターゲットにした一部の週刊誌に、興味本位な記事がしばしば掲載されます。例えば、「Aという薬でBという副作用が0.001%ある」 ことを、「Aを飲むとBになるから止めなさい」 という表現で読者を不安にさせます。また、気になる症状をネットで検索すると、怖い病名がたくさん出てきます。情報社会の海原で漂流しないよう、迷った時こそ、当院をご利用ください。先般の某週刊誌の記事につきましても、定期通院中の患者さんからは、不安のお声を多数伺いましたが、当院の説明で安心して下さったと思います。

Q6 飲み忘れがあるのでしょうか、お薬の数が合わなくなっています・・・。

複数のお薬を、異なる時間で服用していると、うっかりの飲み忘れや紛失などで残薬が出やすくなります。薬局で、同じタイミングで服用するものを一つの袋に入れてもらうことを“一包化”といいます。まとめて服用できるので、飲み忘れや間違いを予防できます。

「今朝は飲んだかな?」 と不安になるような方には、“お薬カレンダー” (曜日、服用時間ごとにお薬を入れるポケットが付いている)の利用も有効です。

お薬の開発の歴史は、ヒトの疾病克服の歴史でもありました。感染症予防のためのワクチンや、治療に使う抗生物質などはその代表です。恩恵に浴する一方で、お薬を服用するのは患者さん自身です。家庭血圧測定のように、ある程度の自己管理が必要になってきます。正しく知り、過信せず、怖がらず、上手に付き合っていきましょう。ご不明な点は、何でも当院や薬局にご相談下さい。