(2019年10月)

~ ストレスについて ~

ストレスとは、こころや体への負担のことをいいます。よい意味では使われませんね。人は生きている以上、何らかのストレスを感じています。多忙な仕事や、家庭でのこと、人間関係。暑さ寒さや騒音のほか、病気による症状なども、いわゆるストレスとなるものです。

原始時代、人にとっては、命の危機をもたらすものがストレスでした。獣に襲われれば、猛スピードで逃げたでしょう。血圧や脈拍を上げ、「火事場の馬鹿力」を発揮して、命を守りました。脳が危機を察知して、回避するための処理を、無意識の内に行います。ストレスに耐えるためのホルモンを分泌させ、自律神経のバランスを緊張状態にさせるのです。一方、現代社会では、人間関係や過重労働などの長引くストレスがあります。緊張や不安、恐怖などを脳が感じ続けると、本来は命を守るための反応が過剰に起こってしまい、こころや体に異常をきたします。「火事場の馬鹿力」を出し続けることはできません。本来、命を守るための仕組みが、逆に命を脅かしていると言えるでしょう。

ストレスがかかり続けると、不安やイライラ、もの忘れ、眠れない、胃腸がおかしい、食欲がない、などの症状がみられます。こころと体が警告を出している状態です。上手く対処できずに心が折れそうになれば、普段の生活ができなくなってしまいます。悪化すれば、うつ状態に陥ることも。高血圧や糖尿病、脳卒中や心臓病につながる危険性も高まります。免疫力が低下するため、がんや感染症にもかかり易くなってしまいます。

ストレスに対する敏感さには個人差があります。生まれつきの性格や生育環境も影響するでしょう。まじめで自分一人で抱え込む性格の人は注意が必要です。相手の気持ちを察しすぎたり、物事を否定的に考える癖がありませんか?最近は世の中自体が、〇か×か、白か黒かで判断され易いように思います。完全主義と相まって、少しの失敗も許せないと思ってしまうことが、ストレスになっているかもしれません。高齢者では、環境の変化に上手く適応できず、悲しい出来事やストレスに耐える力が弱くなっており、若年者に比べて影響を受けやすいと言えるでしょう。

頑張らなければいけない場面は、しばしばありますよね。頑張ればできるんだ、という成功体験も大切でしょうが、頑張り続けることなど、できないものです。ストレスに気づき、遠ざけることが、対処法の基本です。今はストレスを受けていないのに、過去の後悔を思い出し、将来の不安を悩み、心がとらわれてしまうことがあります。繰り返し思い出すこと自体がストレスとなり、自ら脳に負担をかけ続けます(いわゆる堂々巡り)。心の切り替えが必要でしょう。悩みや不満は口にしましょう。抑え込むほど大きくなります。適切な人に相談できるといいですね。問題が解決できない場合、そこから回避する、あるいは環境を変える(転校・転勤・退職など)ことも重要な選択肢となるはずです。適度な運動は自律神経を安定させます。気分がリラックスできる事柄を自分で覚えておき、行動することでストレスの悪循環を断ち切りましょう。まずは自分自身の“こころの声“に耳を傾け、「つらかったんだね」と、あるがままの自分を認めることから始めてみませんか。