脂質異常症の「考え方」

「吉備愛育だより」 11号 平成23年2月1日

昨年、吉備公民館で講演をさせて頂きました。「よくわかる生活習慣病」と題しまして、盛りだくさんの内容になりましたが、大変多くの方が傾聴して下さいました。要約として以下をご参考いただければ幸いです。今回は「脂質異常症」についてです。(以下LDLコレステロールをLDL、HDLコレステロールをHDLと略します)

動脈硬化に直接関わるLDLは悪玉とされる一方、HDLは血管の壁からコレステロールを運び出してくれるため、善玉といわれます。HDLは高い方が良いので、以前用いられた「高脂血症」という病名は今では使われなくなりました。

健診の基準値では、LDLが140mg/dl以上で高値とされますが、単なる線引きでしかありません。年齢・高血圧・糖尿病の有無・心筋梗塞の既往の有無・HDLの値などの複数の要因で、下げるべき目標値は変わってくるのです。治療の管理目標値は人により異なってくるのです。例えば、糖尿病の人では、それだけで120mg/dl以下が望ましいとされます。

心筋梗塞や脳梗塞などの「心血管病」の既往がある人では、LDLを積極的に下げるように治療します。当然服薬が必要ですが、LDLを70mg/dl未満まで下げた上で、HDLとのバランスを考え、病気の再発予防(二次予防)を厳格に行うこともあります。脂質異常症はコレステロールを下げるという言葉以上のことを念頭に治療される時代になっています。

服薬中の方でも食事療法の重要性は変わりません。コレステロール含有食品を控えることよりも、脂肪酸に着目することが大切です。日本人はべに花油・コーン油などの植物性の油であるリノール酸が過剰気味です。脂肪摂取量の多い欧米人が植物性の油をとることには意味がありますが、摂りすぎはカロリー過剰にもなります。α-リノレン酸はえごま油・しそ油などに含まれ、体内では有名なDHAやEPAという脂肪酸に変化して、動脈硬化を起こりにくくします。DHAやEPAはお魚に含まれています。特にアジ・サバ・イワシなどの青魚。中性脂肪を下げ、HDLを上げます。何よりもバランスが大切です。動物性脂肪も成長期のエネルギー源としては大切な油です。牛乳もコレステロールのことだけを考えて全く摂らないと、特に中高年の女性の方では貴重なカルシウム源を失うことにもなります。それがバランスということなのです。

最後に強調したいことは、脂質異常症の一番の治療目的は「心血管病の予防」だということです。他の高血圧や高血糖、喫煙などを放置することなく総合的に治療してこそ十分な予防が可能だという事を忘れないで下さい。