~よい睡眠のために~
ヒトには「概日リズム」という仕組みがあります。いわゆる「体内時計」のことです。朝に目が覚めて、夜には眠くなります。光の刺激や体温の変化によって、睡眠と覚醒(目覚めること)が巧妙に調節されています。概日リズムの周期は約24時間。現代社会では、24時間営業の影響、シフトワーク(夜勤)など、概日リズムが乱れる要因が多々あります。
“寝る子は育つ”は本当で、入眠して3時間ほどの間に成長ホルモンが分泌されます。多感な10代の子供の睡眠時間は、こころとからだの健全な成長に大切なものです。高校生の半数以上が6時間以下の睡眠時間といわれます。スマホなどのディスプレイからの光は、概日リズムに影響し、“宵っ張りの朝寝坊”になります。ドリンク剤などに含まれるカフェインで解消されるのは一過性の“眠気”だけです。睡眠不足には睡眠をとるしか解決法はありません。慢性的な睡眠不足では、逆に眠気を感じにくくなり、酒気帯びと同じ程度に注意力や判断力が低下するということが明らかにされています。
加齢とともに、深い睡眠は減り、睡眠時間全体が短くなります。幼い頃のように、8時間眠って爽快な朝を迎えるということは困難です。「夜中に目が覚めて困るんです」という訴え。中途覚醒といいますが、夜の7時や8時に床に就く高齢者も多く、改善策は「もっと遅くまで起きてて下さい!」となります。そんな時、最近私は“睡眠効率”を提示します。(実際に眠った時間)/(床の中にいた時間) のことで、例えば5時間眠れているのに10時間布団の中だと50%となり、紙に書いてお渡しすると納得されます。もちろん、痛み・筋肉のけいれん・神経疾患・夜間の頻尿・むずむず脚症候群・心配事・考え事・不安症・うつ状態など、不眠の原因への対応も大切です。眠りのお薬が必要な場合でも、当院では年齢や疾患を考慮し、生活習慣や睡眠環境を伺った上で、適切な処方を心がけています。
「最近 眠れてますか?」睡眠の状態を教えていただくことは、とても大切なことです。人生の3分の1は睡眠時間!・・・なのですから。時には高血圧の隠れた原因が見つかったり、“気持ちのつらさ”が明らかになることもあります。秋の夜長、体内時計の音に耳を傾けてみませんか? その他の工夫として、以下の事もご参考に・・・。
☆晩酌は寝る3~4時間前までに。寝酒の効果は限定的で、徐々に飲酒量が増え、依存症への第一歩となります。
☆お昼寝は午後3時頃までに短時間。睡眠不足の症状改善に有効な場合もあります。
☆入浴は寝る1~2時間前が効果的。その後の体温低下が心地よい眠りへ誘います。
☆起床時間は一定にしておくことが大切。夜更かししても、いつも通り起床しましょう。休日も同じ時間に起床、明るい陽ざしのもとで活動を開始しましょう。