(2020年6月)

~ 夏の体調不良あれこれ ~

感染症は、人の移動によって拡散します。新型コロナの流行にともない、手洗い・マスクの徹底、人の移動制限が効を奏し、他の感染症も軒並み減少しています。今季のインフルエンザは、例年より早く流行し始めましたが、患者数を表すグラフの形は、まるで富士山のように頭打ちとなって終息しました。公衆衛生の大切さを実感します。近年のインフルエンザは、9月に流行期入りする地域もありますが、特に沖縄では夏に流行する年が多く、原因はまだはっきりしていません。海外からの旅行者による持ち込み感染が考えられています(沖縄への旅行者の4分の1は海外からです)。

急性の下痢は、高温多湿の梅雨時から増えてきます。夏季は、カンピロバクター、病原性大腸菌、サルモネラ、腸炎ビブリオなどの“細菌”によるものが、圧倒的に多くなります。症状は、腹痛・嘔吐・下痢などですが、発熱や血便がみられることもあります。例えば、「生焼けの鳥肉を食べた」といった場合、まずはカンピロバクターを疑います。バーベキューも油断しやすく、生焼けのお肉を食べてしまいがちです。鮮度には関係ない、ということも知っておきましょう。近年ブームの、ジビエ料理(野生の猪や鹿などの肉料理)も十分な加熱が必要で、思わぬ寄生虫や、E型肝炎ウィルスに感染することがあります。いつ頃、どんな食事を摂ったかが参考になります。下痢止めは、原因となった病原菌を体内にとどまらせてしまうため、原則使用しません。細菌を特定する検査や、抗生剤の服用が必要な場合もあります。小児や高齢者は重症化しやすく、注意が必要です。とにかく、「お肉は火を通したものを食べる!」ということが、何より大切です。

とびひ(伝染性膿痂疹)は、皮膚の感染症で、黄色ブドウ球菌という細菌が原因となります。ちょっとした虫刺されが、きっかけになりやすく、ひっかき傷などから感染します。小児に多く、夏場に発症しやすくなります。通常は、抗生剤の内服や塗り薬で治療し、4~5日で改善しますが、抗生剤が効きにくい細菌が原因となる場合も多く、油断できません。アトピー性皮膚炎の患者さんでは、悪化しやすいので注意が必要です。

尿管結石症は、肥満や生活習慣病をもつ人に多い傾向があります。外気温が上昇する夏季には、結石が発生しやすくなるとされます。汗が増えた分、尿が濃縮されるからだと考えられます。学会の指針では、食事以外の水分摂取量が1㍑以下では発症しやすくなることが分かっており、2㍑の飲水をすすめています。好発年齢は40~50歳代で、もともとの体質も影響し、両親や兄弟に尿管結石の人がいれば、危険性は高くなります。

食欲不振は、夏バテが原因とは限りません。心不全・甲状腺機能低下症・貧血・うつ・脱水・くすりの副作用などのこともあり、この時期だからこそ、きめ細やかに診させていただく必要があります。急な症状の場合、特に高齢者では、心筋梗塞や脳卒中がかくれていることもあります。