(2019年2月) 

~ アレルギーって何? ~

日本アレルギー協会が、2月20日を「アレルギーの日」と制定しています。1966年のこの日、日本人研究者が、アレルギー反応に関わるIgEというタンパク(抗体)を発見しました。花粉症や喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど、アレルギー疾患とよばれる病気の解明や治療につながっています。体外から侵入する異物や病原体を、やっつけようとする仕組みを「免疫」といいます。なくてはならない働きですが、必要以上に、過剰に免疫が反応してしまうことを「アレルギー」とよびます。食物、花粉、ダニ、ハウスダストなど、必ずしも敵ではない、さまざまなものに反応してしまうため、問題となります。

近年、先進諸国では、アレルギー体質の人が急増しています。同時に研究がすすみ、これまでの常識をくつがえす結果も出てきています。特に、小児の食物アレルギーについては、赤ちゃんの皮膚をしっかりとケアすることによる、予防の重要性が注目されています。

食物アレルギーは、赤ちゃんに多く、就学前までに90%のお子さんは食べられるようになりますが、親にとっても大変な戦いを強いられます。原因として、体質も関わりますが、乳児期に皮膚炎や湿疹があると、食物アレルギーになりやすいことがわかってきたのです。

ヒトの腸には、常に異物が侵入するため、免疫が発達しています。ただし、食物を敵と認識すると困るため、アレルギー反応にブレーキをかける仕組みも備わっています(免疫寛容)。常に外界と接する皮膚にも、免疫の仕組みがあります。湿疹(炎症)などによって皮膚が壊されると、未消化の食物のカスが侵入しやすくなります。腸と異なり、皮膚から侵入した食物は、異物と認識されやすく(経皮感作)、同じ食物を口にしたとき、アレルギー反応を起こしやすくなります。腸から吸収された食物は、アレルギーを起こしにくく、炎症を起こした皮膚から吸収された食物は、アレルギーを起こす危険性が高くなるのです。したがって、乳児期の皮膚炎や湿疹を早期にしっかり治すことが、予防につながるのです。

治療は、「原因となる食物を除去する」ことから、「除去は最低限とし、食べられる量を調べて食べる」という方向に変化しました。安全に食べることができる範囲を見定めるために、「食物経口負荷試験」を行います。少量ずつ食べることで克服を目指す時代になってきました。もちろん、専門医療機関で取り組んでいくことが必要です。

Q アトピー性皮膚炎の原因は、食物なのですか?

A アトピー性皮膚炎の基本的な原因は、皮膚のバリア機能(守る力)の低下です。さまざまな刺激で湿疹になりやすいのです。乳児期では、症状悪化の原因として、食物の影響もありますが、皮膚の乾燥・汗・ダニなどの、さまざまな環境因子が影響してきます。

Q 母親の食習慣が、子どものアレルギーに関わりますか?

A 妊娠中や授乳中の母親が、卵や牛乳などの、アレルギーを起こしやすい食物を食べないようにしても、子どもの食物アレルギーを予防する効果はありません。離乳食を遅らせることも意味がなく、生後5~6か月で少量ずつ開始することが推奨されています。

Q 血液で調べるアレルギーの検査があると聞きましたが?

A アレルギーの原因となるものをアレルゲンといいます。血液検査ではアレルゲンごとに、IgEの量を測定します。IgEの量が多いからといって、必ずしも症状に結び付くわけではありませんが、最初に行う検査として、原因の目星をつけるために有効です。

Q 食物アレルギーがありますが、予防接種は注意が必要ですか?

A 日本で通常行われている予防接種は可能です。インフルエンザワクチンは製造で鶏卵を使用します。微量の鶏卵成分が混ざる可能性はありますが、実際は安全に接種できることがわかっています。

Q 花粉症がつらいのですが、薬を服用するしかないのですか?

A ダニやスギ花粉のアレルギーに対する「舌下免疫療法」は、少しずつ体内にアレルゲンを取り込むことで、免疫反応を和らげる方法です。アレルギーを起こした過剰な免疫にブレーキをかけるという、もともと備わる体内の仕組みを利用したものです。3年以上続けることで効果が期待できますので、根気はいりますが、根治の可能性が高い治療法です。

幼い頃から、家畜と触れ合う生活をしている人では、アレルギー体質が少ないとの報告があります。生乳を摂取するなど、家畜のさまざまな細菌が体内に取り込まれることで免疫の暴走が起こりにくくなると考えられています。免疫の分野は、どんどん解明が進む一方で、まだまだ未知の部分が多く、人体の巧妙な仕組みに圧倒されるばかりです。本庶佑先生のノーベル賞受賞で注目されたように、がんや難病の治療へと進んでいくことが期待されています。