~脂質との付き合い方(その2)~
Q ところで、動脈硬化とは?(以下LDL/HDLコレステロールを、単にLDL/HDLと略します)
Q そもそもコレステロールとはどんなもの?
A 中性脂肪(いわゆる脂肪)や脂肪酸などの、“脂質”とよばれる栄養分の仲間です。食事から摂取されるコレステロールは20~30%で、残りは体内で作られたものです。細胞、ホルモン、消化液などの原料として利用されます。コレステロールそのものは血液に溶けないため、運び屋タンパクに含まれて血液に溶けた状態で身体の隅々に運ばれます。運び屋タンパクの種類によって、性質が異なります。LDLは、血管の壁に入り込みやすく、変性されて動脈硬化の原因となります。一方HDLは、不要になったコレステロールを運び出すことで動脈硬化を抑制します。LDLを悪玉、HDLを善玉と表現するのは、このような理由からなのです。
Q コレステロールの値はいくらが良いのですか?
A LDLは危険因子の中でも、最も管理を必要とする脂質です。健診の基準値では、LDLが120~140mg/dl以上、HDLが40mg/dl未満で「脂質異常症」の疑いとなりますが、これは単なる線引きです。診療の場では、学会が示す指針に基づき、危険因子も評価した上で、総合的に判断します。例えば、糖尿病を指摘された場合、それだけでも、LDL120mg/dl以下が望ましいとされます。心筋梗塞の既往がある人では、再発予防の治療のため、LDLを70mg/dlまで下げる厳格な管理が必要になります。
Q コレステロールが高い人は、卵を食べない方がいいの?
Q 最近耳にするトランス脂肪酸とは?
A 人工的に作られた加工油で、マーガリンやショートニングなどに含まれます。LDLを増やし、動脈硬化の進展に関わります。日本人の摂取量はもともと少ないとの理由で、国は積極的な規制対象とはしていませんが、表示の義務化が望まれるところです。
Q 運動療法の効果は?
A 糖尿病やメタボには特に効果的です。ウォーキング・水泳・スロージョギングなどの軽い(息切れしない程度の)運動を、“30分以上、週3回以上”が基本です。中性脂肪を下げ、HDLを上げる効果が期待でき、動脈硬化進行予防にも有効です。
Q なかなか検査値が改善しません。お薬による治療が必要ですか?
A 目標値にとどかない場合は、上記のことを理解していただきながら、服薬を勧めます。特に心血管病の再発予防の場合、ほとんどの場合で服薬が必要です。発症するまで自覚症状が無いのが心血管病の特徴です。また、甲状腺ホルモンの異常などが隠れていて、脂質異常を起こす場合もあります。当院では諸検査をしながら、年齢や血管の状態も考慮に入れ、その人その人に合わせた安心できる管理を心がけています。