(2021年4月)

~ 新型コロナウィルスワクチン ~

【はじめに】 「マスク・手洗い・3密回避」 やっと馴染んできた感染対策。防戦一方だった私たちに、ようやく反撃の手段が与えられました。今月/来月と内容を更新しつつ、新型コロナワクチンについて、専門用語を使わず、わかりやすく説明させていただきます(以下、さしあたって使われることとなる、ファイザー社のワクチンについて述べます)。

【新しいワクチン】 ワクチンは、病気を引き起こすウィルスなどから身体を守るための手段です。ウィルスの成分(表面のタンパク質など)を注射するなどして、身体に抵抗力(免疫力)をつけます。新型コロナワクチンでは、ウィルスの成分自体ではなく、成分(表面の突起部分)の“設計図”を投与して、ヒトの身体に成分を作らせるという発想のものです。設計図は、早く大量に作ることが可能です。今後問題となってくるであろう変異株に対しても、設計図を書き直すだけで、素早く対応できる利点もあります。国産ワクチンに期待を寄せる声を聴きますが、日本は様々な社会問題を経て、残念ながら、“ワクチン後進国”(行政も企業も)であることは、明らかになった通りです。

【効果】 95%の有効性と言われていますが、95%が感染しないというわけではありません。それぞれの人が感染して症状が出る危険性が95%減るということです。重症化予防効果もあります。どうやら、無症状の感染に対しても、有効性があるとする報告も出てきています。

【安全性】 驚異的なスピードで開発されましたが、きちんとした試験を経て認可されています。治療で使われる薬での有害な作用を「副作用」といいますが、ワクチンでは「副反応」とよびます。部分的な反応としては、接種部位の痛み・発赤・腫脹・リンパ節の腫れがあります。全身的な反応としては、発熱・だるさ・頭痛・悪寒・嘔吐・下痢・筋肉痛・関節痛などがみられます。2回目の接種で頻度が増える傾向がみられています。接種翌日から1~2日程度が多いようです。これらの副反応は、他のワクチンでもみられるもので、新型コロナワクチン特有の副反応は報告されていません。頻度が注目されているアナフィラキシーとは、強いアレルギー反応のことです。他のワクチンより、やや多いようですが、接種人数が増えれば頻度は減少してくる可能性が高いと思われます。実は、抗生剤や痛み止めなどの、薬で起こる頻度よりも、ずいぶん低いのです。ワクチンの副反応は、もともと健康な人に起こるわけですから、今後も迅速に情報を公開し、国民に理解してもらうことが最も重要です。

【禁忌】 ワクチンに含まれる成分に、重度のアレルギーがある場合以外は、接種禁止とはなりません。新型コロナワクチンは2回接種しますが、1回目の接種でアナフィラキシーを起こした人は、2回目の接種はできません。これまでに、お薬・ワクチン・造影剤などで、アナフィラキシーの既往がある人でも接種は可能で、接種後30分程度は、経過観察をする必要があります。食物アレルギー、花粉症、ハウスダストなどのアレルギーがある場合にも、通常どおり接種できます。

【まだよくわからないこと】 当然ですが、5年後、10年後の安全性は、わかりません。効果の持続期間も、まだわかりません。世界で接種が始まって、半年ほどです。現状、イスラエルでの試験結果からも、半年以上は効いていそうです。当面、マスクや感染対策は、これまで通り必要となります。

最近よく耳にする「集団免疫」という言葉。新型コロナの場合、集団の70%が免疫をつければ、収束へ向かうとされますが、これもわかりません。確かに、予防接種の目的には、接種した個人を守るだけでなく、ワクチンすら接種できない弱者を守るという大切な面もあります。このたびのワクチンは、努力義務の扱いですが、強制されることや、集団免疫を期待して義務感から接種する必要はありません。「みんなが接種するのだったら、自分も接種したい」というお声を、時々耳にしました。あくまで自分自身の感染予防と重症化予防、“いのちを守る”ことを第一に考えていただきたいと思います。