2016年4月

~塩と高血圧(その2)~

高血圧は、脳卒中や心臓病・腎臓病などをもたらします。特に日本人に多い脳卒中には、血圧が一番大きく関与します。食塩は、血圧上昇に関わるだけでなく、体内のホルモンの影響を介して、脳や腎臓などに障害を与えることが分かっています。

減塩の取り組みには、知識と工夫が必要です。小さじ1杯の食塩は約5g。とはいえ、調味料として使う場合以外は、食塩の含有量は分かりにくいものです。インスタントラーメン1食分を平らげれば、それだけで1日分の食塩を摂取したことになります。

食塩摂取量の90%は、加工食品(漬物・食パン・インスタントラーメンなど)からですので、食塩の含有量を知ることが必要です。そのため企業や政府の協力が不可欠なのです。食品包装の裏を眺めてみましょう。これまで加工食品の栄養成分表示は、「ナトリウム」表示でした。ナトリウム量は、実際の「食塩」の量(食塩相当量)とは異なるため、ナトリウムの値を2.54倍で計算(換算)しなければいけませんでした。昨年4月に施行された食品表示法では、食塩相当量の表示が義務化されたので、食事療法に取り組みやすくなるでしょう。「一袋食べちゃうと、こんなに塩分をとってしまうのか。このへんで止めておこう!」となれば、しめたもの。

「塩分制限を謳いながら、和食を勧めるのは矛盾している」と非難する人がいますが、それは誤解です。和食は素材そのものの味を大切にし、味覚よりも鮮度や食感を楽しむ要素が強いと思います。出汁に加える一つまみの塩や、醤油のさじ加減は繊細です。むしろ、焼魚に醤油をかけたり、ラーメンの汁を全部飲んでしまう人は、減塩に役立つ工夫がいくらでも見つかりそうですね。人間の「しょっぱさ」の味覚は、10%以内の変化には鈍感なのです。それを逆手にとって、少しずつ、徐々に慣らしていくことが大切な“コツ”です。

高齢者では、減塩の結果、薄味のために食が進まず、低栄養に陥ることが懸念されます。全身状態に応じて、減塩の必要性もふくめ、医師の指導が必要です。また、夏の熱中症対策には、汗で失う程度の塩分補給を必要とする場面も増えています。一方、心不全や腎臓病の患者さんでは、夏場でも塩分制限を続けることが必要です。

① 食材の味を生かし、出汁のうま味・香辛料などを利用。香りや味わいに変化を。
② 「薄味で美味しくないから、続かない」とならないよう、前述のように、“少しずつ”取り組みましょう。
③ 減塩は幼少期から。大人になっても味覚が変わらず、濃い味を好むことで、生活習慣病に結びつきやすくなります。