2015年10月

~腸内細菌のおはなし~

乳酸菌、ビフィズス菌、大腸菌、みなさんはどれくらいの細菌の名前をご存知ですか?ヒトの腸の中には、約1000種類以上、100兆個以上もの細菌が存在することが明らかとなっています。これら細菌は、腸内でお花畑(=フローラ)のように集団を形成するため、「腸内フローラ」、または「腸内マイクロビオーム」とよばれます。いま、“腸内細菌”が注目されています。遺伝子(ゲノム)解析技術により、ヒトの腸内細菌の驚異的な役割が次々に解明されてきているからです。

胎内の赤ちゃんは無菌状態ですが、出生の瞬間から細菌の洗礼を受けることになります。1歳頃までに住み着いた腸内細菌は、母親や周囲の環境の影響下に、それぞれ固有の腸内フローラを形成していきます。腸内細菌は、ビタミンの産生や食物繊維の分解など、腸管からのエネルギーの吸収に重要な役割を果たしています。最近の研究では、腸の病気はもちろん、脂肪肝や肥満症にも関与していることが明らかとなっています。将来は腸内細菌を操作することが、肥満症の治療や予防手段の一つになるかもしれません。他にも、がんや、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病、神経の難病などとも密接に関連していることが判明してきています。もはや腸内細菌は、肝臓・腎臓というような、一つの「臓器」としてとらえる時代になっていると言えるでしょう。

腸は口から肛門までの管腔の一部です。体内にありながら、外界とつながっています。成人の腸の長さは約10mですが、内腔の表面積は何と、テニスコート 一面分もの広さがあります。そこを、食物などの異物・細菌・ウィルスなどが、常に通過するため、外界から身を守る“免疫”という働きの最前線でもあるのです。腸内細菌と、アレルギーや感染症との関連も、精力的に研究されています。

古代ギリシャ、医学の父とも言われるヒポクラテスは、次のように述べています。

「胃腸の不調は、すべての悪の根源である」

加齢とともに、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が減少し、有害物質を産生する悪玉菌が増えていきます。腸の老化と言ってもよいでしょう。今や便秘を抱える日本人は、800万人とも言われます。腸の健康は、便秘の解消から。便の80%は水分ですが、残りの固形分の半分以上は、腸内細菌とその死骸なのです。“便”は、腸内細菌からの、“お便り”。“便りのないのは悪い便り”。便秘やストレスの解消、十分な運動、肉食に偏りすぎない食生活で、”快腸”を維持しましょう。