2015年6月

~気になるサプリ(その2)~

(2) 機能性表示食品の誘惑

新年度から食品表示の新たな仕組み、「機能性表示食品制度」が始まりました。「特定保健用食品(トクホ)」と「栄養機能食品(特定のビタミン剤など)」にしか認められていなかった、健康への効果・効能表示。「一般食品」についても、一定の条件下で科学的根拠を届け出れば、企業の責任(国は責任を負わないということ)で表示できるようになりました。しかも、健康食品だけでなく一般の加工食品や、生鮮食品など幅広い食品が対象となります。身体の部位を示して改善に役立つことが謳えます。たとえば「お肌の潤いを保つ」「おなかの調子を整える」など。当然、安全性や有効性に関する審査は無く、「消費者にチェックしてほしい」と、消費者庁。消費者がリスクを負わされかねないと、消費者団体は懸念しています。一方で、「すっきりしたい人に」のような、あいまいだった健康食品の表現が、より分かりやすくなるメリットもあるでしょう。「○○という栄養が含まれる」と表示されることで、野菜などのもつ、知られていなかった価値を伝える手段にもなるでしょう。

重要なことは、この制度が安倍内閣の規制改革・成長戦略であり、あくまでも経済効果を期待しての制度だということ。消費刺激効果により、日本の健康食品市場は現在の5倍に拡大できるそうです。企業にとってはビジネスチャンスかもしれませんが、消費者は、今一度立ち止まって考えてみることが必要になったと実感します。

平成25年には、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されました。新鮮で多様な食材・栄養バランスのみならず、季節感・家族の絆を大切にした食文化が評価された経緯がありました。新制度には、そのような食文化を支える要素は無さそうです。表向きの表示に“誘惑”され、消費者が、食品添加物や生産者の顔を見落としがちになる恐れはないでしょうか?個人的には、スーパーに行って、「本品には○○が含まれており、××の機能があります」などと表示された生鮮食品が、ずらっと並んだ様子を想像すると、少々肌寒いものを感じます。

健康食品は、健康になるためではなく、「健康な人が摂取して健康の維持に役立つもの」と考えることが、本来の姿でしょう。不足した栄養以上のものを摂取したからといって、ますます体調が良くなるわけではありませんから。たとえ表示される成分自体に効果があるとしても、服用する含有量で、それだけの効果が出るとはかぎりません。本欄では、個々の具体的な成分についてのコメントは、あえて避けました。摂取しようか迷っているという場合は一緒に考えてみましょう。せっかくとっている健康食品、「安心」という効果・効能?は、大切にしたいものです。