2015年4月

~気になるサプリ(その1)~

(1)
 健康食品雑感

「スッキリしたい人に」「毎日の健康のために」新聞や雑誌を眺めると、健康食品の広告が目につきます。キャッチフレーズとともに、顔写真入りで体験者の声。なんだか効きそう。でも、何がスッキリなのか不明。目覚め?便通?やせるの?健康食品に効能・効果を表示することはできません。内閣府による平成24年の調査では、50歳以上の約3割が、健康食品を毎日利用しているという結果が出ています。

健康食品・サプリメントの定義は、あいまいです。広く健康維持・増進に役立つ食品のことですが、錠剤やカプセルのような薬の形をしたものがサプリメントということでしょう。私たちが日々口にするものは、大きく「医薬品」と「食品」に分かれます。食品はさらに、「特定保健用食品(トクホ)」、「栄養機能食品(特定のビタミン剤など)」、「一般食品」の3つに分かれます。健康食品は「一般食品」に含まれます。医薬品ではないので、法律により「~に効く」などの、効能・効果を表示できません。一方、特定保健用食品(トクホ)は、健康増進法に基づいて、健康の維持や増進に役立つ内容が表示できます。「脂肪を消費しやすくする」「コレステロールが高めの方へ」など。企業からの申請により、有効性などが審査され、消費者庁が許可します。国のお墨付きとされますが、過信は禁物。記憶に新しいところでは、某メーカーの食用油に発がん性に関わる物質が含まれていることが問題化しました。高額に見合うだけの効果が期待できるのか疑問です。今年2月には、「ノンアルコールビール2種類にトクホ表示を許可」との報道。内閣府が、「未成年者の飲酒を助長する懸念があり、不適切だ」としたにも関わらず、消費者庁は表示を許可しました。いずれも大手メーカーです。認可までの過程が不明瞭で、以前より産官癒着が問題視されていただけに、トクホ表示の品格が問われる出来事でした。

もともと健康食品は、栄養不足を補うという意味が大きかったと思います。近年は、アンチエイジング~美容やダイエットなど、多種多様な目的で利用されます。大手メーカーも参入し、以前のような“あやしい”ものは減りました。医療者側からも、健康食品を「飲んでいるか、飲んでいないか」で、目くじらを立てることもなくなりました。当院でも、治療中の病気に影響するものや、服用中のお薬の効果に関わるもの以外で問題視することはありません。むしろ、不当に高額な商品を手にしてしまった(もともと原価は安いものです)といった話を伺うと、残念に思います。

幼稚園でもらった「肝油ドロップ」。長らく「缶油」だと思っていました。実はこれ、健康食品ではなく、医薬品。効能も表示されています。どうして一粒しかもらえないの?友達の家に行くと、タンスの上にドロップの缶。印刷された幼児の笑顔の写真。「美味しいよ!」と声が聞こえてきそう。最後まで「ちょうだい」とは言えませんでした。どうやら成分はビタミンAとD。昭和初期の栄養不足の時代、子供の発育のためや、夜盲症の予防などのために製品化されたもの。飽食の現代、その有効性は分かりませんが、よく売れているそうです。缶の表面には、今でも懐かしい男の子の笑顔の写真。思わず会社に問い合わせてみました。現在は二代目で、90周年キャンペーンとして、抽選で選ばれた一般のお子様だそうです。

折しも、新年度から、食品表示の新たな仕組み「機能性食品表示制度」が始まりました。次号では、そのあたりのことについて触れてみたいと思います。