2015年2月

~養生のすゝめ~

医療がどれだけ進歩しても、病気を未然に防ぐことほど重要なことはありません。自己管理して健康な生活を送ることが求められます。いま、見直されつつある“養生”という言葉。簡単には「健康を保つこと」をいいますが、「生命を養い、長生きする」という意味があります。中国では紀元前から使われた言葉のようです。今年の干支、未(羊)。「羊」のように栄養のあるものを「食」べて元気に過ごすという意味もあるのでしょう。

いまから約300年前、江戸時代前期の儒学者、貝原益軒(かいばらえきけん1630~1714)。41歳以上で「老人」といわれた時代に、84歳という長命でした。「養生訓」という著書で有名です。古書も参考にしていますが、自分自身が経験した養生法を記載しており、説得力があります。それだけでなく、一般庶民向けの啓蒙書として、やさしく説明されていることも特徴です。現代の考えからは、首をかしげる内容もありますが、「腹八分が大切」「早寝早起き」「欲をこらえる」など、時代に関係なく通じるものが多くみられます。過食や極端なダイエットに走る現代人を見て、益軒はどう思うでしょうか?

最近ブームの、「こんな成分が含まれているから、これを食べれば健康に・・・」という、“一品健康法”。別名“みのもんた症候群”。103歳で現役医師の日野原重明先生は、毎日ステーキを食べるのかもしれませんが、「ステーキを食べれば長寿になれる」と勘違いした人は天寿も全うできなくなります。ステーキを食べれるくらい活動的な毎日を送っているということです。ちなみに、日野原先生の今年の抱負は「夢の実現」。日頃の食事には気をつかわず、運動もしていないのに、とっかえひっかえサプリ(健康食品)をとって安心している現代人。益軒が現代に蘇れば、驚きを通り越し、悲しみに暮れることでしょう。

益軒の妻は、養生訓の出版年に他界しています。益軒はその翌年に亡くなっています。心気を養うことが重要と説き、摂生して生涯を過ごした益軒自身も、伴侶の死を乗り越えることはできなかったのかも知れません。